患者様は左下のかぶせ物が取れたところに歯を入れてほしいとのことで来院されました。かぶせ物が取れたところは半年以上放置していたということでした。歯が折れてしまい残った根も歯ぐきに埋もれてしまっている状態でした(黄色○部)。
残念ですがこの歯は残せないことを患者様に説明し、抜歯を行いました。
患者様には抜歯した所をこれ以上放置すると、両隣の歯や反対側の歯が動いてしまい、最終的には全体の咬み合わせが悪くなることを説明し、歯を入れる必要性を理解していただきました。歯を入れる方法は、入れ歯、ブリッジ、インプラント、親知らずの移植があります。それらのメリット、デメリットを説明し、患者様は熟考した上でインプラント治療を希望されました。
インプラントは手術の安全性と、治療後に長持ちすることが望まれます。そのため私は、コンピューターガイデッドサージェリーを積極的に採用しております。
コンピューターガイデッドサージェリーとは何かといいますと、インプラント手術を行うまでに、専用のソフトを用いて、コンピューター上でインプラント治療を計画した後、手術用のガイド(マウスピースのようなもの)を作り、それを用いてインプラント手術を行うことです。
これにより、理想的な位置にインプラントを入れることができ、安全で正確な治療を行うことができます。この患者様にもコンピューターガイデッドサージェリーを採用しました。
以下、詳しい手順を説明していきます。
患者様の歯型をとり石こう模型を製作します。
患者様のCTを撮影します。
石こう模型を技工所のスキャナーで読み込み、3次元の模型データを作ります。
3次元の模型データと、CTデータを専用のソフト上で重ね合わせます。これにより、製作するガイドの精度が上がります。
インプラントの埋入位置を決定します。断面図を精査し、顎の骨だけでなく、血管や神経の位置を把握し、それを傷つけないよう安全な設計を行います。また、最終的には歯(かぶせ物)を入れて咬めるようになることが目的ですので、反対側の上顎の歯としっかりと咬める歯(かぶせ物)の形・位置も設計し、それを考慮したインプラントの位置を最終的に決定します。
手術用のガイドを設計します。模型データ上に設計するため、精度のよいガイドができます。
出来上がったガイドの3次元データを技工所に送り、ガイドを製作します。
当日、製作したガイドを用いて、インプラント手術が行われました。
ガイドにはドリルを入れる穴が開いており、そこにドリルを入れると、コンピューター上で設計していた位置にインプラントを埋入する穴が作れます。
事前の計画通り、安全でかみ合わせに理想的な位置にインプラントを埋入することができました。また、ガイドを用いることで手術の時間も短縮され、患者様の身体的・精神的な負担も減らすことができました。
手術翌日に消毒を行いましたが、患者様は手術後も腫れや痛みがほとんどなかったと大変喜んでおられました。 ここから数か月の間はインプラントと骨が化学的に結合するまで待ちます。その後かぶせ物を製作していく流れとなります。
年齢:20代 男性
治療期間:5か月
治療回数:4回(消毒、抜糸を含むと8回)
治療費:465,500円(税込)(初診料2,000円 再診料 1回1,000円 インプラント埋入275,000円 頭出し11,000円 歯型取り5,500円 かぶせ物165,000円)
【インプラント治療のメリット】
・隣の歯を削らなくてよい
・かみ合わせの崩壊が進みにくい
・残っている歯に過剰な力がかかりにくい
・自分の歯と近い感覚で食事を楽しめる
・固定するので入れ歯のように付け外す心配がなく異物感が少ない
【インプラント治療のリスク・注意点】
・インプラントも歯周病と同じで、周りの歯ぐきや骨が炎症を起こします。ひどくなれば周りの骨が溶けてしまい、歯と同じように抜け落ちてしまいます。天然の歯よりもインプラントは細菌に感染しやすいので、インプラント治療後は毎日の歯磨きに気をつけなければいけません。
・インプラント治療は手術が必要です。体の病気の状態によっては、インプラント治療ができない場合があります。また、病気に配慮した上でインプラント治療が行えた場合でも、その後インプラントが長持ちしない可能性があります。
・インプラント手術の過程で下顎の神経に触れてしまうことにより、神経が損傷したり、圧迫されたりして起こります。当院ではCT画像で神経の位置を確認、把握し、神経麻痺が起こらないように精査しております。
・インプラント手術の過程で血管を損傷したとき大量出血する可能性があります。
こちらに関しましても、当院ではCT画像で血管の位置を確認、把握し、血管損傷が起こらないように精査しております。
・インプラント手術後、腫れや痛みが長期間続く場合は細菌の感染が疑われます。その場合は抗菌剤の投薬などで様子を見ますが、最悪の場合はインプラントを除去する可能性もあります。当院ではこのようなことが起きないように、手術前の検査や手術中の衛生管理を徹底しております。
・過度な力がかかるとかぶせ物が欠けたりする場合やインプラントが脱落することがあります。
・喫煙はインプラントの成功率を下げます。
・十分な骨の量が不足する場合は、骨を作る処置が必要となり、治療期間が長くなる場合があります。
インプラント治療は健康保険がききませんので、今回の治療は自由診療(自費)になり費用がかかります。
当院は保険診療でも抜けた歯を補う治療に取り組んでおりますので、歯のことでお悩みの方は、ぜひ当院にお越しください。