60代の男性です。右上の前歯が折れたということで来院されました。
診査の結果、右上の前から3番目の歯の被せ物が虫歯のせいで取れてしまい、根っこだけが残っている状態でした。
虫歯も根の中まで広がっており、このままの状態では残すことが難しいと説明しましたが、患者様は歯をできるだけ抜かずに残してほしいと希望されました。そこで、歯にゴムの矯正装置をつけて引っ張り、歯ぐきにうもれている健康な歯を出して被せ物を作ることにしました。
神経を取ったり、虫歯で健康な歯を失った場合は、土台を立てて補強し、被せ物をすることで、歯としての噛む機能や見た目を取り戻します。
しかし、健康な歯を大きく失い歯ぐきの中にしか健康な歯が残っていない場合、そのまま土台を立てたとしても、お口の中でいろいろな方向から力がかかるため、耐えきれずにすぐ取れてしまいます。
それはなぜなのでしょうか。
被せ物が取れにくく長持ちするには、歯ぐきの上に健康な歯が出ていないといけません(歯ぐきの上に出ている所をフェルールといいます)。今回の患者様の場合、健康な歯が全く出ていません。
被せ物が健康な歯をしっかりとつかむことで、被せ物が取れにくく長持ちします(フェルール効果といいます)。健康な歯が最低でも1.5mmは必要とされています。
健康な歯を出すために、歯に矯正装置をつけて引っ張ります。そして健康な歯をしっかりとつかむ被せ物を作ります。このようにして歯を長持ちさせることにしました。
実際の治療の写真です。
歯を抜かずに残すことができ、またセラミックの被せ物がとても自然で綺麗だったので、患者様はとても喜ばれました。
今後は他の歯も合わせて長く健康に維持できるように、定期的な清掃・メンテナンスに通っていただくことになりました。
年齢:60代 男性
治療期間:3.5ヶ月
治療回数:7回
治療費: 175,500円(税込)(初診料2,000円 再診料1回1,000円 歯を引っ張る装置55,000円 調整料1回2,000円 歯型取り5,500円 セラミックのかぶせ物 99,000円)
【エクストルージョン(歯を引っ張る治療:挺出治療)のメリット】
・歯を抜かずに残せる。
・歯が長持ちしやすくなる。
・歯ぐきの状態が良くなり、歯磨き・メインテナンスがしやすくなる。
【セラミックのかぶせ物のメリット】
・見た目が美しく、自分の歯の色に近い自然な白さを再現しやすい。
・精度が良く、虫歯が再発しにくい。
・金属アレルギーの心配がない。
【エクストルージョン(歯を引っ張る治療:挺出治療)のリスク・デメリット】
・歯の状態によっては、治療期間が予定よりも長くなることがあったり、中断することもある。
・外科処置が必要となる場合がある。
・治療途中に歯が割れたり保存が不可能になった場合は抜歯になることもある。
【セラミックのかぶせ物のリスク・デメリット】
・歯に優しい強度のため、被せ物がまれに割れることがある。
・金属よりも歯を少し多めに削る必要がある。
歯を引っ張る治療、セラミックのかぶせ物は健康保険がききませんので、今回の治療は自由診療(自費)になり費用がかかります。
当院は保険診療でも可能な限り歯を残すように取り組んでおりますので、歯のことでお悩みの方は、ぜひ当院にお越しください。