患者様は左下の歯が痛いということで来院されました。診査の結果、左下の前から4番目の歯が折れていました。(左写真黄色〇)硬い金属の土台が歯を大きく割ってしまっていたため、残すことが難しく、抜歯をしました。
抜けた歯を補う方法として、ブリッジ、入れ歯、インプラント、それらのメリット、デメリットを説明し、インプラント治療を希望されました。
CTでの精査の結果、折れた歯に細菌が感染しており、外側の骨が大きく失われていました(写真黄色〇)。
このままインプラントを埋入しようとしても、骨に固定できない(=インプラントが長持ちしない)可能性がありましたので、まずはインプラントを埋入するための骨を作る手術を行うことにしました。
骨を作る手術をしているところです。歯ぐきをめくると、CTでの診査の通り、外側の骨がありませんでした(写真黄色〇)。骨を補う材料を入れて(写真青色〇)、歯ぐきを閉じました。この状態で半年待ちます。
半年後にCTを撮影しました。すると、骨が失われていたところに、骨様の組織ができておりました。(写真黄色〇)インプラントを固定するのに十分な状態になりましたので、インプラントを埋入することにしました。
インプラント手術の写真です。歯ぐきをめくると、CTでの診査の通り、失われていた骨の部分に骨様の硬い組織ができていました(黄色〇)。インプラントを埋入し(写真青色〇)、固定の状態が非常に良かった同時に頭出しの手術も行いました(写真白色〇)。
インプラントは手術の安全性と、治療後に長持ちすることが望まれます。そのため当院では、コンピューターガイデッドサージェリーを積極的に採用しております。
コンピューターガイデッドサージェリーとは何かといいますと、インプラント手術を行うまでに、専用のソフトを用いて、コンピューター上でインプラント治療を計画した後、手術用のガイド(マウスピースのようなもの)を作り、それを用いてインプラント手術を行うことです。
これにより、理想的な位置にインプラントを入れることができ、安全で正確な治療を行うことができます。この患者様にもコンピューターガイデッドサージェリーを採用し、シミュレーションで設計した通りの位置にインプラントが入りました。
インプラントを埋入して3か月後です。歯ぐきの状態も良好です。被せ物を作り咬めるようにするため、歯型をとることにしました。
被せ物を製作する技工士にインプラントの位置を正確に伝えるため、歯型を取る専用の器具(写真黄色〇)をインプラントに装着し、歯型を取りました。
製作された被せ物です。
インプラントの被せ物は、スクリュー(ネジ)で固定するタイプと、セメントで固定するタイプがあります。スクリューで固定するタイプを今回は採用しました。ネジ穴はプスチックの樹脂で最終的に埋めるのですが、その分、見た目はセメントで固定するタイプより劣ります。しかし、セメントを使用しないため、歯ぐきに炎症が起こりにくく、インプラントに問題が生じた時の対応も容易になります。
ほとんど調整の必要がなく、被せ物が入りました。しっかりと食事ができ、また白い被せ物が入ったことで、患者様は非常に喜ばれました。今後はインプラントや他の歯が健康に長持ちするように、定期的な清掃で通ってもらうことになりました。
年齢:60代 女性
治療期間:10か月
治療回数:4回(消毒、抜糸を含むと8回)
治療費:575,500円(税込)(初診料2,000円 再診料 1回1,000円 骨を作る処置110,000円 インプラント埋入275,000円 頭出し11,000円 歯型取り5,500円 かぶせ物165,000円)
【インプラント治療のメリット】
・隣の歯を削らなくてよい
・かみ合わせの崩壊が進みにくい
・残っている歯に過剰な力がかかりにくい
・固定するので入れ歯のように付け外す必要が無く異物感が少ない
【インプラント治療のリスク・注意点】
・インプラントも歯周病と同じで、周りの歯ぐきや骨が炎症を起こします。ひどくなれば周りの骨が溶けてしまい、歯と同じように抜け落ちてしまいます。天然の歯よりもインプラントは細菌に感染しやすいので、インプラント治療後は毎日の歯磨きに気をつけなければいけません。
・インプラント治療は手術が必要です。体の病気の状態によっては、インプラント治療ができない場合があります。また、病気に配慮した上でインプラント治療が行えた場合でも、その後インプラントが長持ちしない可能性があります。
・インプラント手術の過程で下顎の神経に触れてしまうことにより、神経が損傷したり、圧迫されたりして起こります。当院ではCT画像で神経の位置を確認、把握し、神経麻痺が起こらないように精査しております。
・インプラント手術の過程で血管を損傷したとき大量出血する可能性があります。
こちらに関しましても、当院ではCT画像で血管の位置を確認、把握し、血管損傷が起こらないように精査しております。
・インプラント手術後、腫れや痛みが長期間続く場合は細菌の感染が疑われます。その場合は抗菌剤の投薬などで様子を見ますが、最悪の場合はインプラントを除去する可能性もあります。当院ではこのようなことが起きないように、手術前の検査や手術中の衛生管理を徹底しております。
・過度な力がかかるとかぶせ物が欠けたりする場合やインプラントが脱落することがあります。
・喫煙はインプラントの成功率を下げます。
・十分な骨の量が不足する場合は、骨を作る処置が必要となり、治療期間が長くなる場合があります。
インプラント治療は健康保険がききませんので、今回の治療は自由診療(自費)になり費用がかかります。
当院は保険診療でも抜けた歯を補う治療に取り組んでおりますので、歯のことでお悩みの方は、ぜひ当院にお越しください。