歯にできもの。抜かないといけないと言われた歯を根管治療した症例

今回は、根の病気で歯ぐきにできものができて抜くしかないと言われた歯を、精密な根管治療を行い抜くことを回避できた症例について説明します。

※後進の歯科医師育成、指導のため、歯の状況や治療方法について専門的に説明しています。ご了承ください。

右下の一番奥の歯は、根に大きな病巣を作っており、CTでみると顎の骨を大きく溶かしておりました。骨を溶かして貫通し、歯ぐきに膿のできものを作っていました。患者さんは、他の歯科医院では抜くしかないと言われたそうですが、どうしても抜かずに残したいと希望されましたので、精密な根管治療を行うことにしました。

なぜこのような状態になったのか、治療前に考える必要があります。

CTを確認すると、２本ある根っこのうち、奥にある根っこには薬(白く写っている物)が根の先まで入っておらず、神経の取り残しが疑われました。

また、薬が入っている所にも隙間が見られ、薬をつめる緊密さが低いとも思われました。

取り残された神経は腐ってしまい菌が繁殖します。また、根の中に隙間があればそこは菌の繁殖する場所になってしまいます。これらが原因で、根に大きな病巣を作り骨を溶かしていると考えました。

歯の場所も右下の一番奥の歯なので、唾液が入りやすく、以前の治療中に唾液が入り細菌感染した可能性もありました。

治療のポイントとしてはまず、取り残された神経をしっかりと取ることです。根っこは曲がっているので、最新の形状記憶の器具を用いて曲がった所も取り残しがないようにします。

また、根の中の神経の形は円形ではなく、ラグビーボールのような楕円形をしています。よって、いくら最新の器具を用いたとしても、器具は円形をしていますので、端の所で取り残しが起きてしまいます。器具の動かし方を工夫したり、他に超音波の器具を用いて、顕微鏡で根の中を見ながら取り残された神経や汚れを取る必要があります。

治療中は唾液が入らないように、ラバーダムというゴムのシートで歯を囲います。治療中に唾液からの細菌感染が無いようにします。

治療を開始し、根の入り口を顕微鏡で確認した所、やはり、奥の根には薬が入ってはいるものの、隙間が見られ黒い汚れがたまっていました。取り残された神経が腐敗したものと考えられます。少し器具で触っただけで大量の黒い汚れが出てきました。取り残された神経には何億もの細菌が繁殖しているので、しっかりと取り除く必要があります。

根の形はやはり円形ではなく、楕円形をしていました。端の方に汚れが残らないように、超音波の器具を用いて取り綺麗になりました。

途中で根の状態をCTで確認した所、根の先は大きく直角に曲がっていました。根の見た目の先端と、実際の先端は違っていることが多々あります。大きく曲がっている所に薬をしっかりとつめることは難しいです。今回は超音波の振動を与えることで、緊密に薬をつめました。

治療後のCTです。全ての根っこで、先端まで薬が緊密につめられていることが確認できました。

治療後すぐに、大きなできものは消えて無くなりました。患者さんは痛みもなく、歯を抜かずに残す事が出来て大変喜ばれました。本当に良かったです。

説明は以上になります。精密な検査を行い、それに対する適切で精密な根管治療を行うことで、抜かないといけないと言われるほどの歯でも残すことが可能になります。

このような治療をご希望の方はぜひ、みつおデンタルクリニックへお越しください。ご拝読いたたき、ありがとうございました。

みつおデンタルクリニック 院長

精密な検査と治療で歯を守る会　代表　高津光雄

【今回の精密根管治療について】

年齢：40代　男性

治療期間：1ヶ月

治療回数：2回

治療費：100,000円(税込)　かぶせ物の金額は別になります。

【精密根管治療のメリット】
・歯を抜かずに残せる可能性が高くなる。
・歯が長持ちしやすくなる。
 

【精密根管治療のリスク・デメリット】
・外科処置が必要となる場合がある。
・骨が再生するには時間がかかる。
・歯が割れていたり、治療の過程で保存が不可能と判断した場合は抜歯になることもある。

・一生長持ちするわけではない。治療後も経過観察が必要。