患者様は右上の歯に違和感を訴えられていらっしゃいました。
レントゲンで確認すると、右上奥の歯の根っこの骨が大きく溶けてしまっていました。
歯ぐきを見ると、大きなできものができていて、膿(う)んでしまっています。
これは数年前に神経を取った歯です。しかし、きちんと神経を取る治療をしていれば、通常このようなことにはならないはずです。
「神経を取った」と歯医者が言っても、実際は半分も取れていないと言われています。歯の神経・根っこの形は複雑で、顕微鏡や特殊な器材、薬剤を使わないと、将来根っこに病気ができる可能性が高くなります。不十分な治療でも、すぐに痛みなどの症状はでません。何年か経過して、顎の骨が大きく溶けるまで痛みなどの症状が出ないので、患者様は良い治療を受けたのか、不十分な治療を受けたのか全くわかりません。
顕微鏡や特殊な器材を用いても、非常に難しい神経・根っこの形をしている場合、不十分な治療になることもあります。ですので、歯医者は簡単に神経を取ろうとしてはいけないのです。神経を取るのであれば、その歯が何十年も長持ちするように覚悟を持って取らないといけないのです。
今回の治療は以前の治療のやり直しになります。以前の治療で歯の根っこが壊れていることもあり、治療はとても複雑になります。
神経の入り口を見ると、一つの入り口から膿(うみ)が多量に出てきました。根の病気の大きな原因はこの神経の取り残しではないかと思いました。取り残した神経が腐ってしまい、根の外に菌が出ていき、顎の骨を溶かしていたのでしょう。
取り残された神経を取り、薬剤で根の中を洗浄し、しっかりと薬をつめました。
次回いらした時、歯ぐきにできていた大きなできものは消えていました。治療が上手くいき、溶けた骨が再生する方向に向かっていると思われました。(溶けた骨は半年~2年以上かけて再生します)
今回の歯の顎の骨は大きく溶けており、治療が上手くいったと思っても、正直何年この歯がもってくれるのかはわかりません。残った健康な歯も少ないので、割れてしまう可能性もあります。
しかし、歯を抜きたいと思う患者様はいません。少しでも歯を残せる可能性があれば、残してほしいと思うのが普通です。それに応えるように努力するのが、歯医者のあり方だと思います。
【今回の神経の治療について】
年齢:50代 男性
治療期間:2週間
治療回数:3回
治療費: (保険治療3割負担で)3,000円程度
【神経治療のメリット】
・歯を抜かずに残せる可能性が高くなる。
・歯が長持ちしやすくなる。
【精密根管治療のリスク・デメリット】
・治りが悪ければ外科処置が必要となる場合がある。
・骨が再生するには時間がかかる。
・治療途中に歯が割れたり、保存が不可能と判断した場合は抜歯になることもある。
このような症状でお悩みの方は、ぜひご相談ください。
みつおデンタルクリニック 院長 高津光雄