抜いてインプラント。本当にその歯は抜くしかないのか？費用の現実

患者様は、右上の奥に銀歯が入っていますが、銀歯の中で虫歯が再発していました。

元々通っていた歯科医院では、「虫歯が大き過ぎるので治療できない。抜いてインプラントにしましょう。」と言われたそうです。どうしても歯を抜くのは嫌で、残せないかどうか見てほしいとのことで、当院を受診されました。

右上の奥に２本銀歯が入っており、その中で虫歯が再発していました。また、この歯は過去に神経を抜いていましたが、虫歯の再発のため根の病気ができていました。根の治療を行う必要があります。

根の治療を行うにあたり、まず健康な歯が残っていないと治療が難しいです。以前の歯科医院では、虫歯が大きく健康な歯がほとんど残らないので、抜いた方が良いという判断になったのでしょう。

まず銀歯を外しました。中では以前の治療で行ったプラスチックの土台がありましたが、歯との隙間に大きな穴があり虫歯になっています。

プラスチックの土台と虫歯を慎重に削っていきます。

全て削り終わりました。銀歯にできた虫歯の穴には食べかすなども挟まっていたので、歯茎も腫れており、歯茎からの出血もあります。

この状態では、確かに抜くことをすすめてもおかしくはありません。しかし、歯は割れているなどの致命的なものは見つからなかったので、患者様に説明しました。患者様は少しでも長く歯を残したいとの希望がありましたので、残す事にしました。

歯を抜くことは簡単ですが、歯を残す場合、非常に繊細な処置が必要になります。

健康な歯が残っていない状態で根の治療を行ったとしても、治療中にだ液が根の中に入ってしまいます。だ液には何十億もの細菌が存在するため、だ液を入れないように、歯に外壁(囲い)を作る必要があります。

その外壁はプラスチック樹脂のレジンで作るのですが、歯にレジンを接着させるため、歯が唾液や血液でぬれていると接着しないため、乾燥させる必要があります。

歯ぐきから出血があり、このままでは乾燥できません。電気メスで血を止める処置を行い、乾燥させます。

乾燥状態を保ったまま、レジンで外壁を作りました。これでだ液が入る可能性が無くなりましたので、一安心です。根の治療をすすめることができます。何とか抜かずに残す事が出来ました。

この非常に繊細な処置ですが、根の治療を行う前の処置に関しては全て根の治療に含まれるため、実質０円です。保険制度の問題点は、治療を行えば費用が発生しますが、治療の質は関係ない事です。出血も止めずに外壁も作らなくても、治療の費用は変わらないのです。これに関しては治療を行う歯科医師の良心に委ねられます。

この処置は難しく慎重に行わなければ失敗するため、１時間以上かかることもあります。しかし、報酬としては実質０円です。根の治療を行い、かぶせ物をしても２万円程度の費用です。

一方、歯を抜いてインプラントを行うと、保険がきかないため１本４０～５０万円(相場)の治療費です。

このような保険制度の現実と自由診療の治療費の大きな差が、悪い歯の状態の時に残すよりも抜いた方が良いということになってしまうと考えています(歯の神経を抜くか残すかも同じです。神経を抜いた方が治療費は高いです)。

インプラントは当院でも行いますし、インプラントが悪物とは思っていません。しかし、あまりに治療費に差があるため、全国すべての歯科医院、歯医者が歯を残したい理想と現実で悩んでいるのです。

歯科医院は医療の現場ですが、経営の事も考えないと歯科医院は続けることができません。非常に繊細な処置が求められることに価値が付かない(０円)のであれば、行わない、となっても責めることはできません。

会社と同じです。利益が出ることに重きを置き、利益が出ないことは行わないという判断は、会社を継続させるために必要です。悲しいですが、これが日本の歯科の現実なのです。

歯を抜くことは簡単です。しかし、歯を残すことは非常に繊細な治療が求められます。時間も非常にかかります。

当院では、顕微鏡(マイクロスコープ)、CTを始めとした精密機器を完備しており、歯を残す事に特化した専門的治療を行っております。保険治療も行いますし、より歯の長持ちをご希望される患者様には、自由診療(保険外治療)も行っております。

今回のような歯を残す治療をご希望の患者様は、ぜひみつおデンタルクリニックへお越しください。ご拝読ありがとうございました。

みつおデンタルクリニック　院長

精密な検査と治療で歯を守る会　代表　高津光雄

健康な歯をできる限り削らない「ハーミノス虫歯治療法®【特許庁・商標登録】」を考案