７０代女性の患者様、食事がしにくいということで来院されました。お口の中を拝見すると、右下と左下の奥歯の部分にインプラントをされているのですが、土台だけがあり、被せ物が無い状態でした。そしてその土台も大きく損傷し変形していました。

インプラントについて聞いたところ、５年以上前に他の歯科医院で行ったそうです。被せ物に関しては２年くらい前から外れてしまったそうですが、そこの医院が閉院してしまったため、そのまま放置してしまったそうです。その間、土台だけの状態で食事をし生活していたため、大きく土台が損傷、変形してしまったことがわかりました。

被せ物もなく、土台も大きく削れてしまっています（特に右下）。そのため、かみ合わせの高さが全体的に大幅に低くなっていました。

治療の計画としては、大きく失ったかみ合わせの高さを、元々これくらいであっただろうと思われる高さに仮歯を作って上げて(上下ともに)、しばらくその状態で食事・生活してもらい(慣れてもらう)、感想を聞きながら高さの微調整を行い、かみ合わせの位置、高さが安定したところで最終的な被せ物を作る、という流れに決めました。

インプラントを作る会社(メーカー)はたくさんあり、多くの種類があります。当院で扱っているインプラントとは異なるものでした。インプラントのメーカーと種類をレントゲンの特徴等から特定し、そのメーカーと連携し治療の計画を打ち合わせしました。

インプラントは骨に埋まっている部分です。土台とインプラントは分かれていて、ネジで締めてインプラントに土台を固定します。その土台の上に被せ物を入れて完成します。

インプラントの土台は大きく損傷しているため、土台ごと外して、土台から新しく作り直さないといけません。しかし、２年以上にわたり土台だけで食事・生活をしていたことで、インプラントと土台の固定する部分や、土台のネジ穴が変形し、土台が外せない所があることが検査で判明しました。

右下の手前から２本の土台は大きく損傷していますが、土台が動いており、インプラントから外すことが可能でした。それ以外の右下の奥の２本、左下の３本は検査の結果土台が外せないことが判明したので、外さずにそのまま被せ物を作ることにしました。

右下の一番奥のインプラントに関しては、土台の高さが無く不安定なことと、かみ合わせの高さの関係で被せ物を作らずにそのままにすることにしました。

仮歯でかみ合わせの高さを上げるため、外せることのできる右下２本の土台を外し、新しい土台を装着することにしました。手前の方の土台はすぐに外せましたが、奥の方はインプラントと土台を固定するネジのネジ穴が壊れてしまっていたので、溝を新たに削って作り、マイナスドライバーでネジを回して、外すことができました。

新しい土台をインプラントに固定しました。続いて、右下、左下に仮の歯を作りました。最低限必要な土台の高さ、仮の歯の高さの分、かみ合わせを上げました。仮の歯の噛む面の形は、顎の動きが不安定なため、どの位置でも噛めるように、平らな形にしています。上の入れ歯の高さも調整し、その日の治療は終わりました。新しい咬み合わせに慣れてもらいます。

次回いらしたとき、かみ合わせは特に気にならなかったとのこと。その日は上と下の歯の高さ・角度を理想的な状態にするため、上の被せ物を外し、入れ歯と一体化した仮の歯を作りました。

そこから一定期間生活・食事していただき、現在のかみ合わせで問題がないとのことでしたので、最終的なインプラントの被せ物を作ることにしました。

右下から着手しました。被せ物を製作する技工士にインプラントの位置を正確に伝えるため、歯型を取る専用の器具をインプラントに装着し、歯型を取りました。

技工士と最終的な土台と被せ物を相談し、コンピューター上で設計しました。

完成した土台と、セラミックの被せ物です。

問題なくお口の中に入りました。

左下も作ります。土台は外せないので、そのまま必要最低限土台の形を整えて、歯型をとりました。

完成したセラミックの被せ物です。

こちらも問題なく、お口の中に入りました。

左右にしっかりとしたセラミックの被せ物が入り、患者さんは食事が硬い物も食べれるようになったと大変喜ばれておりました。

最後に、上の仮歯になっている歯も被せ物と入れ歯を新製し、治療が完了しました。お口元も綺麗になり喜ばれました。今後は良い状態を保てるように、定期的にお口の清掃に通われることになりました。

年齢：70代　女性

治療期間：3ヶ月

治療回数：8回

治療費： 839,500円(税込)（初診料2,000円　再診料１回1,000円　　歯型取り5,500円　セラミックのかぶせ物 165,000＋132,000×5＝825,000円）

【今回の治療のリスク・デメリット】

・今回の場合、インプラントと土台が他の医院で行われたものであるため、治療が困難になり中断する可能性があります。また治療後も、被せ物の長期の維持が困難な可能性があります。
・インプラントの感染の可能性があります。
・以上２点のような状態になったとしても、他院で行われたインプラントである為、当院では一切の責任を負いかねます。また、保証もできません。

インプラントのかぶせ物は健康保険がききませんので、今回の治療は自由診療(自費)になり費用がかかります。

当院は保険診療でも様々な歯を残す治療、歯を削らない治療に取り組んでおりますので、歯のことでお悩みの方は、ぜひ当院にお越しください。