つめ物の下に虫歯の取り残し。MTAセメントで神経を守った治療の記録
2026/09/13
目次
初診時の状態
今回ご紹介するのは、20代女性の患者様の症例です。主訴は左下の奥歯がしみるという症状でした。
2ヶ月前に近くの歯科医院で虫歯の治療を受けられたそうですが、その後もしみる感覚が続き、次第に鈍くうずくような痛みに変わっていったため、ご不安を感じてインターネットで検索し、当院を受診されました。
虫歯の治療後にしみる症状が出ること自体は、削った刺激による一時的な神経の過敏反応であることが多く、珍しいことではありません。ただし、今回のように症状が改善せず、鈍くうずくような痛みへと変化していく場合は、虫歯が十分に取り除かれていないなど、つめ物の内部で炎症が進行している可能性があります。見た目だけでは判断が難しいため、こうした経過をたどっている場合はレントゲン検査で内部の状態を確認することが重要です。
実際にお口の中を拝見すると、以前の治療で入れられたレジン(歯科用の白いつめ物)には段差が見られましたが、見た目だけでは新たな虫歯があるようには感じられませんでした。しみる症状と鈍い痛みが続いていることから、つめ物の内部で何らかの問題が起きている可能性を考え、レントゲン検査を行うことにしました。
精密検査(レントゲンでの確認)
レントゲンを撮影したところ、レジンのつめ物の下に、虫歯が取り残されているように見える黒い影が確認されました。虫歯が歯の内部にまで進行すると、レントゲン上で黒っぽい影として映ることが多く、今回もこの影の位置から、以前の治療で虫歯が完全に除去されていなかった可能性が高いと判断しました。
なぜ虫歯が取り残されていたのか
虫歯の位置は歯の神経(歯髄)にかなり近く、無理にすべて削り取ってしまうと神経を傷つけてしまう危険がありました。そのため、以前の治療を担当された歯科医院では、神経を保護する目的であえて虫歯の一部を残した可能性があると考えました。
しかし、虫歯を残したままにしておくと、細菌が徐々に神経に近づき、痛みが強くなっていくことがあります。今回のケースも、残された虫歯が少しずつ神経に影響を及ぼし、しみる症状やうずくような痛みにつながっていたと考えられました。
虫歯が神経のすぐ近くまで進行している場合、感染した部分をすべて取り切るか、神経を保護しながら一部を残すかは、歯科医師が症状や検査結果を見ながら慎重に判断する部分です。
近年は、できる限り神経を残す治療方針が重視されるようになっており、今回のようにMTAセメントなどの材料で神経を保護しながら虫歯を取り切る方法が選ばれることも増えています。
治療の流れ
治療にあたり、まず以前入れられていたレジンのつめ物を取り除きました。つめ物の下を確認すると、想定していた以上に大きな虫歯の取り残しが見つかりました。
そこで虫歯の部分だけを染め出す薬剤を歯に塗布し、健康な歯質と虫歯を色の違いで見分けながら、時間をかけて慎重に虫歯を取り除いていきました。この薬剤は虫歯に反応して染まる性質があり、目視だけでは判断しづらい健康な歯質と虫歯の境目を、より正確に見分けるために使用します。
神経のすぐ近くまで虫歯が達していたため、削りすぎて神経を傷つけないよう、少しずつ確認しながら進めました。最終的に、神経の上にはごく薄い健康な歯質が一層残る状態で、虫歯を除去することができました。
この状態のまま通常のレジンをつめてしまうと、神経に近い部分が刺激を受けて炎症を起こす可能性があります。そこで今回は、神経を保護する目的でMTAセメントという薬剤を薄く塗布しました。
MTAセメントは、神経に近い部分を覆うことで刺激を和らげ、神経の生活力を保ちやすくする働きが期待される材料です。このように、歯の神経に近い場所を保護しながらつめ物をする方法を「間接覆髄法」と呼びます。
MTAセメントを塗布したあと、その上からレジンをつめて歯の形を整え、治療を完了しました。今回の処置は、来院当日の1回で終えることができました。
治療後の経過
後日、経過確認のために来院いただいたところ、以前感じていたしみる感覚や鈍い痛みが無くなっていることを確認できました。神経に近い部分への処置だったため、今後も痛みがぶり返さないか、しばらくは経過を見ていく必要があります。
冷たいものや硬いものを噛んだ際に違和感がないか、ご自身でも様子を見ていただくようお伝えしており、もし再び痛みやしみる症状が出てきた場合は、神経に炎症が起きている可能性もあるため、早めにご連絡いただくようご案内しています。
まとめ
今回は、以前の治療で取り残された虫歯が原因で、しみる症状や鈍い痛みが続いていたケースをご紹介しました。レントゲン検査によって虫歯の取り残しを見つけ、神経に配慮しながら慎重に虫歯を除去し、MTAセメントによる間接覆髄法とレジン充填で対応しました。
治療後の経過では痛みが改善していることを確認できましたが、神経に近い処置のため、今後も変化があればお早めにご相談いただければと思います。
みつおデンタルクリニック 院長
精密な検査と治療で歯を守る会 代表 高津光雄
トロント大学 根管治療 スタディプログラム 卒業
寺内吉継先生、フリードマン先生(Prof. Emeritus Shimon Friedman・トロント大学名誉教授)に師事し、
世界基準の根管治療を習得。根管治療の名医として「名医のチョイス」に掲載
難治性の根の病気に対する根管治療法を考案
健康な歯をできる限り削らない「ハーミノス虫歯治療法®」(特許庁・商標登録)を考案
大阪梅田・天満で、精密な根管治療と虫歯治療を提供できるよう日々研鑽
【今回の治療について】
年齢・性別:20代 女性
治療部位:左下第二大臼歯
治療期間:1日
治療回数:処置自体は当日1回で完了(経過確認のための再診1回あり) |
治療費:60,000円
【メリット】
- 歯の神経を保存できる可能性が高くなる
- 抜髄(神経を取る処置)など根管治療を避けられる可能性がある
- 当日1回の来院で治療を完了できることがある
【デメリット・リスク】
- 治療後も歯髄(神経)に炎症が残っている場合、痛みが続いたり、後日抜髄・根管治療が必要になったりする可能性がある
- MTAセメントを使用した間接覆髄処置は保険適用外のため自費診療となる
- 効果には個人差があり、経過観察が必要である
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みつおデンタルクリニック
〒530-0036
住所:大阪府大阪市北区与力町4-15 ダイナスティ与力101
電話番号 :06-6948-6232
拠点の天満で虫歯から守る治療を
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