歯に開いた穴(パーフォレーション)をMTAセメントによる根管治療で抜歯を回避した症例
2026/08/29
目次
初診時の状態
患者様は40代女性です。左下の奥歯(左下6番)の歯ぐきに、できもののようなふくらみができていることに気づき、近所の歯科医院を受診されました。そこで検査を受けたところ、「歯に穴が開いているので、抜歯が必要です」と説明されたとのことです。ご本人としては、できれば歯を抜かずに残したいという強いご希望があり、当院にご相談にいらっしゃいました。まずは、実際にどのような状態になっているのかを詳しく調べることにしました。
口腔内を確認すると、写真のとおり歯ぐきにふくらみが見られました。これは「サイナストラクト、フィステル(瘻孔)」と呼ばれるもので、歯の内部や周囲で炎症が起きているときに、膿の通り道として歯ぐきにできる出口のことです。近所の歯科医院で指摘された「穴」も、この炎症と関係していると考えられたため、レントゲン写真などで内部の状態をさらに詳しく調べることにしました。
精密検査でわかったこと
レントゲン(CT)写真で確認したところ、歯の根の中央付近に、骨が溶けている影(骨透過像)が見つかりました。これは、その部分で炎症が続き、周囲の骨が吸収されてしまっていることを示すサインです。
3D画像では、レントゲン写真だけでは分かりにくい骨の状態を、立体的に確認することができます。
これらの検査から、歯の根の中央部分に「パーフォレーション(穿孔)」と呼ばれる穴があいており、そこから周囲の骨に炎症が広がっていると考えられました。パーフォレーションとは、歯の内部を治療する器具などが誤って歯の壁を突き破ってしまい、歯に穴があいてしまった状態のことです。今回のケースでは、過去に根管治療(歯の内部の神経の治療)を受けた際、根管の入り口を探す途中でできたものと考えられました。
パーフォレーションができると、その穴を通って歯の内部に細菌が入り込みやすくなり、周囲の骨に炎症が広がってしまうことがあります。今回のケースでも、この穴が炎症の入り口となり、レントゲン写真や3D画像に写っていた骨透過像として現れていたと考えられました。
治療の流れ
今回は、この穴をふさぐ「パーフォレーションリペア」という処置を行うことにしました。マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)で歯の内部を拡大しながら治療を始めたところ、歯の中央付近に穴が開いているのが確認できました。
この穴の周りに広がっていた汚染された部分を、ラバーダムというゴム製のシートで治療する歯だけを隔離しながら慎重に取り除いていくと、内部から膿が出てきました。
膿や汚染物質を超音波洗浄器などで丁寧に洗浄すると、穴の形がはっきりと確認できるようになりました。
1回目の治療から日を空けて2回目の治療にお越しいただいた際には、歯ぐきのでき物(サイナストラクト、フィステル)が消えていることを確認しました。
炎症が落ち着いたことを確認したうえで、穴の部分にMTAセメントという材料をすきまなく詰めて埋めました。MTAセメントは、封鎖性(すきまを作らず密閉する性質)に優れた材料です。
MTAセメントには、水分があるところでも硬化が進むという特徴があり、歯の内部のような湿った環境でも固まります。処置後は仮のふたをして、治療を終了しました。
治療後の経過
根管治療とかぶせ物の治療から1年後、経過観察のためにレントゲン写真を撮影しました。すると、以前は黒く写っていた骨透過像(骨が溶けていた部分)が縮小し、骨が回復してきていることが確認できました。
3D画像でも同様に、骨の再生が確認できました。パーフォレーションの部分をしっかり封鎖できたことで、周囲の骨が修復に向かったと考えられます。
患者様は大変喜ばれました。本当に良かったです。
今後も定期的な検診で、レントゲン写真などにより骨の状態や歯の状態に変化がないか、経過を見ていく予定です。
パーフォレーションについてよくあるご質問
Q. パーフォレーション(穿孔)とはどのような状態ですか?
A. 歯の内部(根管)を治療する際に、器具が誤って歯の壁を突き破ってしまい、歯に穴があいてしまった状態のことです。根管の入り口を探す処置や、土台を作る処置の際に起こることがあります。
Q. パーフォレーションを放っておくとどうなりますか?
A. 穴から細菌が侵入しやすくなり、周囲の骨が溶けてしまう(骨吸収)ことがあります。炎症が進むと、歯ぐきにでき物(サイナストラクト)ができたり、歯を残すのが難しくなったりする場合があります。
Q. 抜歯を勧められた場合でも治療できることはありますか?
A. 穴の場所や大きさ、周囲の骨の状態によっては、MTAセメントなどで孔を封鎖する「パーフォレーションリペア」によって歯を残せる可能性があります。ただし、状態によっては抜歯が必要な場合もあります。
Q. 治療後、骨は必ず元通りになりますか?
A. 個人差があり、必ず元通りになるとお約束できるものではありません。今回の症例では、治療後1年の経過観察で骨の再生を確認できました。
まとめ
今回は、過去の根管治療の際にできたと考えられるパーフォレーション(穿孔)を、MTAセメントによる封鎖で修復した症例をご紹介しました。歯ぐきのでき物や、歯科医院で抜歯を勧められた場合でも、状態によっては歯を残せる可能性があります。気になる症状がある方は、一度詳しい検査を受けてみることをおすすめします。
抜歯を勧められた場合でも、あきらめる前に、セカンドオピニオンとして精密検査を受けてみることで、今回のように歯を残せる可能性が見つかることもあります。当院ではマイクロスコープや歯科用CTを使った精密な検査・治療を行っておりますので、お困りの方はお気軽にご相談ください。
みつおデンタルクリニック 院長
精密な検査と治療で歯を守る会 代表 高津光雄
トロント大学 根管治療 スタディプログラム 卒業
寺内吉継先生、フリードマン先生(Prof. Emeritus Shimon Friedman・トロント大学名誉教授)に師事し、
世界基準の根管治療を習得。根管治療の名医として「名医のチョイス」に掲載
難治性の根の病気に対する根管治療法を考案
健康な歯をできる限り削らない「ハーミノス虫歯治療法®」(特許庁・商標登録)を考案
大阪梅田・天満で、精密な根管治療と虫歯治療を提供できるよう日々研鑽
│トロント大学 根管治療プログラム 卒業│
【今回の治療について】
年齢:40代 女性
治療部位:左下第一大臼歯
治療期間:2週間(経過観察期間を含まない)
治療回数:2回
治療費: 精密根管治療費 120,000円(税込)
※かぶせ物の費用は含まれていません。
【精密根管治療のメリット】
・抜歯をせず、ご自身の歯を残せる可能性がある
・MTAセメントは封鎖性・生体親和性に優れ、穿孔部をすきまなく塞ぎやすい
・穿孔部を封鎖することで、周囲の骨が回復に向かう可能性がある
【精密根管治療のリスク・デメリット】
・穿孔の場所や大きさ、進行の程度によっては、封鎖しても十分な効果が得られない場合がある
・治療後も症状が続く場合は、再治療や外科手術、抜歯が必要になることがある
・自由診療のため保険が適用されない
・MTAセメントは硬化までに時間がかかり、来院回数が複数回になる場合がある
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みつおデンタルクリニック
〒530-0036
住所:大阪府大阪市北区与力町4-15 ダイナスティ与力101
電話番号 :06-6948-6232
高技術な根管治療を天満で実施
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