治療後に激痛。神経を抜かずに残せた症例(VPT)
2026/07/26
目次
初診時の状態
20代男性の患者様が、右下の奥歯の痛みを主訴にご来院されました。以前に別の歯科医院で治療を受けたとのことでしたが、咬むと痛みがあるだけでなく、何もしていない状態でも強い痛みが続き、冷たいものがしみるという症状もありました。前医では「しばらく様子をみて、痛みが引かなければ神経を抜きましょう」と説明を受けていたそうですが、できれば神経を抜かずに残したいという思いから、当院にご相談にいらっしゃいました。
診察の結果、右下の第二小臼歯(奥から2番目の歯)が「不可逆性歯髄炎」という状態と診断されました。これは歯の内部にある神経(歯髄)に強い炎症が起きてしまい、自然に治ることが難しい状態を指します。不可逆性歯髄炎は、抗菌薬の服用だけでは炎症が治まりにくく、神経に何らかの処置を行う必要があるとされる状態です。
レントゲン写真を確認したところ、以前の治療で虫歯が取り切れていない可能性がある影が見つかりました。前医の先生が虫歯を完全に取り除くと神経が露出してしまうと判断し、あえて一部を残された可能性も考えられました。今回はそこから細菌感染が進み、強い痛みにつながったと考えられます。
お口の中を直接確認すると、以前詰めていたレジン(プラスチック樹脂の詰め物)の境目に段差ができており、汚れが溜まりやすい状態になっていました。この段差から細菌が入り込みやすくなっていたことも、症状が悪化した一因と考えられます。
治療方法の選択
神経に炎症が及んでいる場合、一般的には神経をすべて取り除く「抜髄(ばつずい)」という処置を行うことが多くあります。
しかし今回は、神経の状態を実際に目で確認しながら、可能な範囲で神経を保存する「VPT(生活歯髄温存療法)」という方法を選択しました。
VPTとは、感染や炎症が及んでいる部分の神経だけを取り除き、健康な部分の神経は残すことで、歯の内部の水分や知覚をできるだけ保とうとする治療法です。神経をすべて取ってしまう治療に比べ、歯が割れにくくなったり、虫歯の再発に気づきやすくなったりするといった利点が期待できます。
一般的にVPTは、神経の露出範囲が狭く、感染が神経の表層にとどまっていると判断できる場合に選択されやすい治療法とされています。
実際の治療
まず、前医で取り残されていた虫歯を慎重に取り除いていきました。
取り残しをすべて除去した結果、予想通り神経が露出しました。このとき露出した神経の表面は、色などから腐敗が進んでいると判断されるものでした。
神経全体をすぐに取り除くのではなく、まず表面に近い頭の部分の神経のみを慎重に除去しました。
除去した断面からは鮮明な色の出血が見られ、これは根の奥に残っている神経がまだ健康な状態を保っていることを示すサインです。この出血の様子から、根の部分の神経は保存できると判断しました。
神経を保存できると判断した後は、MTAセメントという材料を神経の断面に塗布しました。
MTAセメントは殺菌作用や封鎖性に優れた歯科材料で、神経を保護しながら再生を促す目的で使用されます。
MTAセメントを塗布した後、最終的な詰め物としてコンポジットレジン(CR)というプラスチック樹脂の材料を使って歯の形を整えました。
以前の詰め物にあった段差もこの際に修正し、汚れが溜まりにくい形態に仕上げています。
治療後にはレントゲン写真で内部の状態を確認しました。
神経の保護に使用したMTAセメントが、隙間なく密に入っていることが確認でき、想定通りの処置ができたと判断しています。
治療後の経過
治療から2週間後、経過観察のためにご来院いただきました。
来院時には、以前あった持続的な痛みや冷たいものがしみる症状はなくなっており、咬んだときにわずかな違和感が残る程度まで改善していました。この違和感は治療部位が安定していく過程で見られることがあるもので、今後の経過を見ながら状態を確認していきます。
そして、現在約2年経過しましたが、違和感も無くなり症状やレントゲン状の問題なく過ごされておられます。患者様は喜ばれました。本当に良かったです。
なぜこの治療が必要だったのか
今回のケースでは、以前の治療で虫歯が一部残されていたことが、強い痛みの引き金になったと考えられます。虫歯を取り切ると神経が露出してしまう状況では、あえて一部を残すという判断がされることもありますが、その分、内部で細菌感染が進行しやすくなるという側面もあります。
結果として神経に強い炎症が起こり、不可逆性歯髄炎という診断に至りました。VPTという方法を選んだのは、神経をすべて失ってしまう前に、保存できる部分は残すことで、歯そのものの寿命を延ばせる可能性があるためです。ただし、神経の保存がうまくいかない場合は、後から改めて神経を取る処置(抜髄)が必要になることもあります。
まとめ
咬むと痛い、何もしなくても痛い、しみるといった症状は、神経に炎症が起きているサインであることが多く、放置すると症状が悪化しやすい状態です。
今回は虫歯の取り残しが原因と考えられるケースでしたが、神経の状態を丁寧に確認しながらVPTという方法で神経の保存を試み、症状の改善が見られました。
神経を保存できるかどうかはケースによって異なりますので、気になる症状がある場合は早めにご相談いただくことをおすすめします。
みつおデンタルクリニック 院長
精密な検査と治療で歯を守る会 代表 高津光雄
健康な歯をできる限り削らない「ハーミノス虫歯治療法®【特許庁・商標登録】」を考案
トロント大学 根管治療プログラム 卒業 世界基準の精密根管治療を行い、根管治療の名医として「名医のチョイス」に掲載
大阪・梅田・天満の患者様に選ばれる精密な根管治療と虫歯治療を提供できるよう日々研鑽
【今回の治療について】
年齢:20代 男性
治療部位:右下第二小臼歯
治療回数:1回(経過観察を含まない)
治療費: 神経保護治療(VPT) 60,000円(税込)
【神経を保護する治療のメリット】
・神経を残せた歯は内部の水分や知覚が保たれやすく、割れにくい傾向がある
・噛み合わせの違和感や虫歯の再発に気づきやすい
・結果として歯の寿命が延びやすくなる
【神経を保護する治療のデメリット】
・術者の技術によって治療後の予後に差が生じる
・治療後も強い痛みや腫れ、噛んだときの痛みが続く場合は神経を保存しきれなかった可能性がある
・経過によって後から神経の状態が悪化し、抜髄(神経を取る処置)が必要になることがある
・歯質の残り方によっては神経を残すことがかえって歯の寿命に影響する場合がある
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みつおデンタルクリニック
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拠点の天満で虫歯から守る治療を
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