折れた前歯と大きなできもの―根管治療と歯根端切除術で抜かずに残せた症例
2026/10/04
初診時の状態
今回ご紹介するのは、「前歯のかぶせ物が折れてしまった。歯ぐきにできものもある」とのことで来院された、30代男性の患者様の症例です。お口の中を確認すると、左上の前歯(左上中切歯)のかぶせ物が取れてしまい、歯の根元の部分しか残っていない状態でした。さらに、その歯の上の歯ぐきには、大きなできものも見られました。
残っている根をよく調べると、根の表面にも浅めのヒビが入っていました。歯の大部分が失われ、さらにヒビもある歯は、抜かずに残すことがとても難しくなります。それでも患者様は、ご自身の歯を残すことを希望されました。
CTによる精密検査
詳しく調べるため、CT(歯やあごの骨を立体的に撮影できる検査)を撮影しました。すると、どの方向から見ても、歯の根の周りの骨が大きく溶けてしまっていることが分かりました。
3D画像で立体的に確認すると、あごの骨が大きく溶けて穴が開き、本来は骨に覆われているはずの歯の根っこが、外から見えてしまっている状態でした。
診断は「左上中切歯の歯冠破折」と「根尖性歯周炎」でした。歯冠破折とは、歯の頭の部分(歯冠)が割れたり折れたりしてしまうことです。根尖性歯周炎とは、歯の根の中に入り込んだ細菌が原因で根の先に炎症が起き、周りの骨が溶けてしまう病気です。歯ぐきのできものは、根の先にたまった膿(うみ)の出口としてできることが多く、細菌の感染が続いているサインと考えられます。なお、根に入っていたヒビは浅いもので、根の深いところまでは達していませんでした。ヒビが深い場合は細菌の入り口をふさぐことができず、抜歯になることが多いのですが、今回はヒビが浅かったため、歯を残す治療が可能と判断しました。
感染根管治療
まずは、歯の根の中から細菌を取り除く「感染根管治療」を行いました。根管とは、歯の根の中にある神経や血管の通り道のことです。治療中は、ラバーダム(だ液が入らないよう歯を覆うゴムのシート)を使い、マイクロスコープ(歯科用の顕微鏡)で根の中を拡大して確認しながら進めました。根管の中の汚れや細菌は、ニッケルチタンファイル(根の中を清掃する、しなやかな器具)で取り除き、ピエゾフロー(超音波の振動で根の中を洗い流す器具)で洗浄をくり返して、根の中がきれいになったことを確認しました。
根の中をきれいにした後は、再び細菌が入り込まないよう、すき間なくふさぐことが大切です。今回は、MTAセメントという薬を根の中につめました。MTAセメントは、すき間を密閉する力が高く、体になじみやすい性質を持つ歯科用の材料です。根の中にきれいにつまっていることを確認しました。
3か月後の経過と外科手術の判断
治療から3か月後に経過を確認したところ、歯ぐきのできものは小さくなっていましたが、完全には治りきっていませんでした。根の先の外側に細菌が残っていると、根の中をきれいにしても治りきらないことがあります。そこで、外科手術による治療が必要と判断しました。
今回行ったのは「歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)」という手術です。歯ぐきを開いて、根の先にできた病変(炎症によってできた悪い組織)を取り除き、さらに細菌が残りやすい根の先端を3mmほどカットします。カットした部分には薬をつめてふたをし、細菌が再び入り込まないようにします。歯を抜かずに、根の先にある原因だけを取り除くことを目指す方法です。
歯根端切除術の流れ
手術では、まず歯ぐきをめくって、根の先にできた病変を取り除きました。すると、溶けた骨の奥に歯の根っこが見えました。
次に、根の先端部を3mmカットして取り除きました。
カットした根の断面を、専用の小さなミラーを使って確認しました。深いひび割れなどの問題は見られませんでした。そのうえで、薬(MTAセメント)をつめるための溝を根の先に作りました。
作った溝にMTAセメントをつめ、きれいにつまっていることをミラーで確認しました。
最後に、めくった歯ぐきを元の位置に戻して糸で縫い合わせ、手術を終えました。
手術直後にCTを撮影し、根の先にMTAセメントがきれいにつまっていることを確認しました。
治療後の経過
手術から1週間後に、縫っていた糸を取りました。この時点で、歯ぐきにあったできものは消えて無くなっていました。
半年後にCTを撮影すると、溶けて失われていた骨が、少しずつ再生してきている様子が確認できました。
3D画像で見ても、骨が再生してきていることが分かります。
さらに2年後のCTでは、失われていた骨がほぼ再生していました。
3D画像でも、ほとんどの骨が再生していることが確認できました。
初診時は、歯の根元しか残っておらず、根にはヒビもあり、周りの骨も大きく溶けている、大変難しい状態でした。それでも、感染根管治療と歯根端切除術を組み合わせることで、なんとか歯を抜かずに残すことができました。患者様は大変喜ばれました。本当に良かったです。
手術後にご自宅で気をつけていただきたいこと
手術後は、数日ほど腫れや痛みが出ることがあります。手術当日は、激しい運動や長時間の入浴、飲酒は控え、強いうがいも避けてください。処方されたお薬は指示どおりに服用してください。
よくあるご質問
Q. 根の先を3mm切っても、歯は大丈夫ですか。 A. 根の先端を3mm程度取り除いても、残った根で歯を支えられる場合が多いとされています。ただし、根の長さや骨の量によって異なるため、事前にCTで確認します。
Q. 根管治療だけで治らない場合は、抜歯するしかないのですか。 A. 今回のように、根管治療で治りきらない場合でも、歯根端切除術という外科的な方法で歯を残せる可能性があります。ただし、歯のヒビの深さや骨の状態によっては適応にならない場合もあるため、精密な検査で判断することが大切です。
Q. 溶けてしまった骨は元に戻りますか。 A. 原因となる細菌を取り除くことで、骨が再生してくることがあります。ただし、回復の程度や期間には個人差があります。
まとめ
今回は、根元しか残っておらず骨も大きく溶けていた前歯を、感染根管治療と歯根端切除術で残すことができた症例をご紹介しました。抜歯が必要と言われた歯や、歯ぐきのできものが気になる方は、一度ご相談ください。
院長紹介
みつおデンタルクリニック 院長
精密な検査と治療で歯を守る会 代表 高津光雄
トロント大学 根管治療 スタディプログラム 卒業
寺内吉継先生、フリードマン先生(Prof. Emeritus Shimon Friedman・トロント大学名誉教授)に師事し、
世界基準の根管治療を習得。根管治療の名医として「名医のチョイス」に掲載
難治性の根の病気に対する根管治療法を考案
健康な歯をできる限り削らない「ハーミノス虫歯治療法®」(特許庁・商標登録)を考案
大阪梅田・天満で、精密な根管治療と虫歯治療を提供できるよう日々研鑽
今回の治療について
| 年齢・性別 | 30代男性 |
|---|---|
| 治療部位 | 左上中切歯 |
| 治療期間 | 4か月 |
| 治療回数 | 5回(消毒などを除く) |
| 治療費 | 感染根管治療120,000円、歯根端切除術50,000円(税込、かぶせ物の費用は別途) |
| 注記 | 自由診療です。 |
メリット
- 抜歯を避け、ご自身の歯を残せる可能性がある
- 根管治療で治りきらない場合でも、外科的な方法で根の先の原因を直接取り除ける
- CTによる立体的な検査で、骨の溶け方や治療後の骨の再生を確認しながら進められる
- MTAセメントでしっかりふさぐことで、細菌が再び入り込むのを防ぐことが期待できる
デメリット・リスク
- 外科手術のため、手術後に数日ほど腫れや痛み、出血が出ることがある
- 歯のヒビが深い場合や骨の状態によっては、治療を行っても症状が改善せず、抜歯が必要になる場合がある
- 骨の再生には時間がかかり、回復の程度には個人差がある
- 治療後も再び感染が起こる可能性がゼロではなく、定期的な経過観察が必要になる
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みつおデンタルクリニック
〒530-0036
住所:大阪府大阪市北区与力町4-15 ダイナスティ与力101
電話番号 :06-6948-6232
高技術な根管治療を天満で実施
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